Reggae×教育【Thunder編】vol.4

Reggae×教育

思い出も『教材』になる

 授業が近づくにつれて色々な打ち合わせが進んでいくなかで、プロフェッショナルの本気がひしひしと感じられた。

 たった1回しか出来ない授業というのは僕たちにとっても同じだ。だが、僕らは知らず知らずのうちに『毎日』繰り返されるものに対して、『貴重』な1回の授業であるということを忘れてしまっているのではないかと反省した。

 『音楽』の素晴らしさや自分たちの本気の姿を伝えるということに対してこだわりを持って準備を整えてくれている姿に感動した。

 Reggaeの文化であるサウンドシステムも感じさせてあげたい!生の音楽を聴かせたいからギタリストを連れていきたい!と様々なアイディアが生み出されていった。僕に出来ることは起こりえるリスクを予想した上で、彼らの伝えたいことが純粋に伝わるように管理職や他の先生にその『良さ』をプレゼンテーションして回っていった。

いよいよ本番

 本番の授業は、すでに今回の授業での最終のゲストということもあり僕自身はさほど緊張はしていなかったが、かなりテンションは上がっていた。

 ただ、子どもたちの雰囲気を見たThunderはかなり戸惑っていた。それは、子どもたちの雰囲気があまり盛り上がっているように見えなかったからだ。そんなはずは無い。もちろん、子どもの中にはまだ歌詞のメッセージやReggaeの良さにしっくり来ていない子もいるだろう。ただ、朝からこの瞬間を楽しみにしていた子は確実にいた

 僕は、なぜこの誤解が生まれてしまっているかについて一瞬にして考えた。

 きっと、子どもたちの今まで教えられている学校での『聴く』というスキルには、真剣になればなるほど「声は出してはいけない。」「笑ってはいけない。」という状態へと『暗黙の圧力』で縛り付けられているのだろう。

 なんだかこの瞬間、僕らが日ごろから繰り返している『教育』は子どもたちの本当に大切にしなくてはいけない『自由な感性』を押し殺しているような『罪悪感』に包まれた。

 僕にとっても『教育者』として成長するためのきっかけになった日にもなった。

 授業では、ThunderがなぜReggaeというCultureに引き込まれていったか、どんな想いを込めて歌っているかなどに触れた。

 それ以外にも、Reggaeの特徴の1つでもある歌詞は同じなのに、バックに流れるリズムを変えて音に乗せて歌うスキルも披露してもらった。

 自分の道を貫くカッコよさの込められた『CYAAN STOP』、地元への想いを込めた『尼の唄』など様々なメッセージに込められた曲はきっとこれから成長していく子どもたちが大人になる過程でまた噛み締める程に自分の人生のエネルギーになるのではないだろうか。

希望

 そして、MVにもなった『希望』も歌ってもらった。

希望 – THUNDER【MV】

 僕は当時子どもたちとは2年目の付き合いであった。それこそ3年生で初めて担任になった時は驚いた。学年で集まればザワザワ人の話を聞く気が無い。それぞれの想いをぶつけては毎日幼稚なからかい合いを繰り返す。ただ、話をすればみんな『素直』に自分の『非』を認めるし、何より同じことはさほど繰り返さない。

 「もしかして教えてもらえてないのか…」とふと思えた。お家の人と話しても、子どもたちへの愛をひしひしと感じる。そもそも伝えきれていないのは『学校』なのかもしれないなと感じた時、僕は子どもたちに伝えたいものが溢れていった。その1つが『希望』には込められている。

どんな時も捨てるなよ希望 不安になったて俺ら一生
この道を進むのがミッション いつかきっと いつかきっと

 『希望』の一節である。

 『教師』の仕事は本当に難しい仕事でありながら、本当に価値のある仕事だと思っている。僕は決して子どもに感謝を押し付ける気もなければ、敬意を持てなんて気持ちはさらさら無い。どうせ、子どもたちの人生に僕たちがやってやれることなんてほんのわずかに違いない。もしかすると全くないかもしれない。

 ただ、僕は『教師』という仕事の出来る範囲で子どもたちに、先の見えない『不安』もたくさんあるこの世の中を生きる知恵を与えてあげたかった。それがこの『希望』なのである。

 もしこれを読んでいる中学生や高校生がいるとすれば、Thunderの歌の歌詞を自分の生活に重ねていって欲しい。きっと少しは『当たり前』に流れていたことが少し違って見えてくるのではないだろうか。

 僕にはそれほど大きなことは出来ない。だからこそ、「迷ったらこれを聴いてみたら?」と光を当ててみたり、「迷ったらいつでも会いにおいで。」と校区に住んでみたりすることが僕の『教育者』としての形なのかもしれない。あとは、子どもが大人になる過程で自分で選んでいけばそれでいいと思っている。

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