学習指導ではなく、学習支援

子ども

 今日は近隣私立中学校の受験の日だった。うちに通っている子どもたちの中にも今日人生で初めての受験を経験した子どもたちが数人いた。
 僕たち家庭学習応援施設My Placeは、確かに受験指導もしている。理由は、それが子どもたちの今求める自己実現の1つの方法ならお手伝いしますよという想いがあるからだ。

 ただ、僕たちは決して「点数を上げます!」だとか「受験指導をします!」と掲げたことは1度も無い。高校受験程度ならすごく難易度の高い学校で無い限り教えることは出来るから必要に応じてやっているだけのことだ。
 何とも高飛車な言い方かもしれないが、僕は受験に必要な内申点を得るために、勉強が好きでも無い状態の子に対して学習塾に高額の投資をすることには反対だ。

 だけど、僕たちはどこまで行っても他人だ。今まで何度もうちの施設を辞めて行く子がいても止めなかった。そうは言っても点数を上げなきゃいけないからという意見には「本人の選んだことならば。」と応援して送り出していた。

 それでもやっぱり僕たちは点数を上げるためのサービスに切り替え無かった理由を今日は書こうと思う。最初に書いておくが、別に点数を上げるという選択が間違っているだとか、学習塾を否定的に捉える意図は全く無いことは伝えておきたい。

僕たちはどんな時代を生きているのか?

 僕たちが家庭学習応援施設My Placeを始めた2020年の1月ほどなくして社会が大きく揺れた。

 新型コロナウィルス感染症の流行だ。学校が休校になり、多くの家庭が戸惑ったことだろう。あの時に僕は痛感したことがある。学校が止まることが、教育が止まることを意味する子の多さをだ。

 教科書はある。インターネットには無料教材が山ほどある。そして、当時今では有料の教育系コンテンツもかなり長期間無料で利用することが出来た。でも、多くの子どもたちの教育が止まったのだ。一日中動画やゲームに身を投じ生活を崩した子の相談を何度も受けた。「宿題は終わった。だからもうやることは何も無い。」

 僕は教育者として「学び続ける人、行動し続ける人を育てること」の必要性を嫌というほど感じた。

 当時決して学習量は多く無くても学習をリズム良く続けていた子がいた。学校では理解出来なかったことが自分でやればやるほど面白くなってきた。その子の嬉しそうな表情は今でも覚えている。だが、学校が始まってすぐその子に余裕は消え、部活動や日々の生活の忙しさから学習量はうんと減っていった。

 学校で働いていた時、僕は自分の感情とは別のところで厳しくあらねばならないと思っていた時期があった。誰の為か?紛れもない自分のためだ。保護者に信頼してもらってこその仕事だと僕は疑うこと無く思っていたし、そうしておく方が楽だったという部分もある。将来役に立つかだとか、その子のためになっているかはさておき、学校という集団を平和に維持するために全身全霊を費やした。

 でも、僕は今教師であった時の自分とは少し違った視点を持つようになった。

 ある人に僕は聞いたことがある。

 「今の時代、嫌々勉強して、全然身に付いていないのに勉強に縛り付ける意味ってそこまであるんですかね?」

 「勉強自体よりも嫌なことから逃げない自分を育てるために勉強はやるんだ。」と返ってきた。

 その子の人生に勉強以外に嫌なことは無いのだろうか?きっとある。嫌なことから逃げない自分の作り方を勉強で教えるなんて方法はナンセンスだと僕は感じた。

 なぜなら時代は進化し続けるのだ。小さな頃に学ぶことは嫌なことと植え付けることによる損失の方が遥かに大きいと僕は感じた。

僕がオススメしている2人の教育者

 もう知識をインプットするためのコンテンツは無料で世の中に溢れかえっている。学校で配られる教科書にも興味が湧かない。動画コンテンツを自分から見ようともしない。出来る限り勉強をやらずに終えたいという子を掴まえて、「勉強やりなさい!!!」ではきっと伸びない子の方がほとんどだし、その子にはきっとずっと大人が並走しておかないといけなくなってしまう。

 恐らくこういうことを言うと「いや、それはお前が勉強できたからそんなことが言えるんだ。」という声が聞こえて来そうだが、僕は特別支援的な配慮については一般的な人よりも遥かに知った上で言っている。ほとんどのお勉強は世の中に無料で溢れている物、安価に手に入れられるもので解決できる。

 僕は今の仕事で2人の教育者を積極的にオススメしている。僕はこの2人の発信に耳を傾け、実践すればほとんどの勉強は解決すると思っている。

 一人目は、教育系Youtuberの葉一さんだ。彼の発信はすごく丁寧でわかりやすい。きっと優しい人なのだと思う。

 しかも、めちゃくちゃ丁寧なサイトまで作り、もう問題集は不要だと言って良い。

葉一のYouTube授業と無料テキスト|19ch(塾チャンネル)
葉一の公式サイト「19ch(塾チャンネル)」。2,000本以上のYouTube授業と専用プリントを無料公開中。とある男が授業をしてみた|小学3年〜6年の算数、中学生の数学、国語、理科、社会、英語、高校数学に対応。高校受験の対策動画や、聞くだけで覚える暗記法も。

 そしてもう一人が、家庭学習応援施設My Placeでも学習法として取り入れているけテぶれ学習の発案者。葛原祥太先生だ。

 気になる人は是非、Twitterで「けテぶれ」というワードを調べて欲しい。いかにたくさんの学校でこうした取り組みが広がろうとしているかがよくわかる。もう日本中でたくさんの教育者が動こうとしているのだ。

 僕たちに残された道は「動くか動かないか」なのかもしれない。

だから僕たちは教えない

 指導では無く支援という言葉を使っているのには少しこだわりがある。僕たちが本当にするべきは子どもの背中をそっと支えてやることだと思っているからだ。確かに2年も施設をやっていれば、学習指導に切り替えればもっと頑張らせられるのになぁ…と思ったことは何度もあった。でも敢えてその子の人生を応援する意味で別れが来たとしても僕はいつもいつでも本人たちに任せた。その結果はもしかするともっと点数は上げてやることが出来たのかもしれない。

 でも、決して僕らのやり方が間違いだったとは思っていない。学校で扱う勉強は、もうお金を掛けなくても解決することが出来る。その意見は変わっていない。

 もうすぐ4月がやってくる。今の中学3年生は僕が教員時代の教え子がほとんどだ。この子たちが卒業していけばいよいよ僕の教師だったというアドバンテージは全く無くなる。来年からの小中学生は僕のことをよく知らない子がほとんどだ。

 まだ3月の公立の高校入試まではあと1ヶ月ある。今日で何かが終わったわけでは無いけれど、4月は確実に目の前にやって来ている。およそ3年近く一風変わった教育施設に通ってくれた中3の子たち、そして大事な我が子の成長を僕たちに預けてくれたお家の方には感謝しか無い。

 「どうせ教え子がいなくなったらやっていけなくなる。」と笑った人には申し訳ないくらい来年からも広く僕たちの教育は伝えていくつもりだ。

 さて、来週からもまた多種多様な子どもたちと楽しくワイワイやっていこうと思う。

コメント

タイトルとURLをコピーしました