昨年の休校中、世の中に溢れた声の1つに『学校が休校になったら勉強が進められない!』という声があった。
この声をきっかけに「学校って学習教室だったっけ?」という気持ちになった。当時議論されることのほとんどは、「この止まった時間のせいで将来お勉強で困ったらどうするんだ。」という雰囲気を感じた。
案の上、多くの子どもたちはコロナ感染の心配とは裏腹に喜んで勉強から離れていった。
ただ、一方で僕が注目していたのはコロナ禍によって『授業』が止まったことによって確実に力を付けた子どもの存在だった。多くの『授業を止めるな!』『宿題だけでも出せ!』といった声の裏で確実に『学び』を止めなかった層がいる。
僕は『教育者』としてこの辺りを自分の頭の中で何度も分解して自分の『教育観』の整理を繰り返していた。そして、一斉授業を盲信し、その再開だけを求めていた声には少し違和感を感じていた。
オンライン化の強み
環境整備が追い付かず3ヶ月近く我が子の『授業』は止まっていた。
私立の学校に通う子はスピード感が速くオンライン授業が始まっていたが、公立はそうはならなかった。ただ、それがすごく困ったかと言えばそこまで困らなかった。小学校低学年の学びは3ヶ月止まろうが、すごくシンプルなものだ。朝起きて、食事をとって、簡単な学習時間の確保、運動時間の確保、おやつを食べて、遊んで寝る。こういった毎日で十分新しいことを学んで行く。
恐らくは、中学生や高校生が不安の声を上げていたのではないかと思う。特に受験についての『不安』がたくさん聞こえていた。
ただ、問題は『止まった』ということだ。『スピードダウン』や『非効率化』ではなく、『止まった』のだ。
一方で、『勉強』がはかどった組もいる。誰に言われるでも無く、登校や下校の移動時間も無くとにかく『オンライン教材』を使ってとことん学習を進めた組だ。インターネット上には無料でも上質なコンテンツは当時から溢れていた。そして、当時色々な企業が『休校』でも困らないようにと色々な教材をインターネット上に無料公開した。それでも『授業が無いから!』『誰も教えてくれないから!』と学習を止めた子と、生まれた時間を有効活用し、動いた子との学習力の差は、個人の満足度や充実度と共に大きく開いたに違いない。
教科書は何だ
日本の子どもたちは義務教育の間は一律『教科書』が配られる。
もしこれを読んでいる大人の中で今の『教科書』を読んだことが無い人は是非一度目を通してもらいたい。今の『教科書』はどれもたくさんの人の意見が反映されていて、下手な参考書よりもコンパクトに必要な情報が書かれている。ましてや学校で使う以上学習指導要領はきちんと押さえられている。対面授業が無くなったとは言え、『教科書』はどの子にも配られている。教科書を読めば大半のことがわかる。ただ、多くの子たちは、去年の休校中自分たちの教科書を読み漁ろうとはしなかった。
文部科学省のGIGAスクール構想で一人一台端末をいくら整備しても、授業に組み込んだり、それを運用する仕組みを作らない限りはただの箱であるのと同様に、いくら上質な情報がたくさん書かれていても子どもがわからない時には『教科書を読もう!』となっていない時点でただの紙切れだ。
僕は去年5月多くの子どもたちと個別の授業を行った。その中で『教科書』の使い方にふれることが多くあったが、どの子もほとんど『教科書』を使って勉強することが無かったことを知った。聞くと授業ではほとんど使わないからという答えがほとんどだった。読む文化が無ければ読めなくて当然なのかもしれない。
情報弱者には厳しい世界へ
最近我が家の下の子は「言ってくれへんかったから…」「やってくれへんかったから…」とこぼすことがある。それに対して「言ってもらって当たり前、やってもらえて当たり前じゃないよ。助けて欲しい時にはきちんと助けてとお願いしなさい。」と注意することがある。
便利なものが増えるとついつい便利なことが当たり前になることがある。
5Gのインターネットが当たり前になれば今よりさらに多くのことがオンラインでも可能になる。時代はここ数十年で大きく変わり続けている。勉強が苦手だという子はもしかすると、自分で情報を得る習慣が無いのかもしれない。親世代には「多少勉強が出来なくたって人間力があれば…」という声も多く聞こえてくる。
ただ、もし自分の目の前にいる子どもたちが「情報を自ら取りに行く能力」が育ってないなと感じれば是非一度その子が生活の中で『受け身』になっていないかを見てあげて欲しい。そんなこと昔は言われなくても…という考えはすごく危険だ。それしか方法が無い世界を生きた大人とすでに便利になった時代を知る子ども、そして今後もっと情報で溢れる世界に変わることを考えると「知らないこと」を正義として自論だけを展開し、現実の『情報』は掴みに行かない子に育ったとしたら今後は今よりさらに生きづらくなってしまう可能性もある。
まずは、便利な社会を生きる上で育ってしまった『情報スルー力』を見つめ直し、必要な『情報』は自分で掴む習慣を教えてあげることをオススメしたい。
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