ついにやってきた寿君
寿君が来てくれると決まってからというもの、子どもたちの話題は加熱していった。
「先生、寿君ってテレビで見たことあるで!!」
「先生、Youtubeでめっちゃ聴いてるねん。」
一人、また一人と寿君にハマっていく子どもたちや、お家の人の話を聞くようになってきた。もちろん、全員では無いだろうと思うし、公立の小学校で一部の価値観を押しつけるなんて!といった僕らの伝えたいことの本質でない批判を受ける可能性は十分にあることはわかっていた。
それでも、僕たちは卒業を迎える子どもたちに「感謝の気持ちを伝える良さ」「大切な人が近くにいること」「挑戦することの大切さ」を改めて噛み砕くことのできる授業は絶対に必要だと感じていた。だからこそ、授業の時間では無い色々なタイミングで歌詞を紹介したり、音楽を聴かせたりしながら寿君の良さを伝えていった。
そして、2019年1月22日寿君が学校に来てくれたのであった。
色々な支えが隠れていた
授業のことを詳しく書く前にきちんと書いておきたいことがある。
それは、この授業は寿君が協力してくれただけで成立したワケでは無かったということである。
まずは、前回にも書いたがid ENTERTAINMENTの社員の方が何度も打ち合わせに連絡をしてくれた。恐らく会社の方に何度も掛け合ってくれたのだろうと思う。また、学校の機材では十分なスピーカーが無いということもあり、Thunderとの出会いからの付き合いである尼崎のサウンドEMPERORのYamatoくんがスピーカーの手配や人員を集めてくれた。そして、寿君の歌をダンスで盛り上げるために浪速音頭のPuchiくんが駆けつけてくれたのであった。多くの人に支えられて作られたこの授業はまさに僕たちの学校にとっても『Special Thanx』だと言えるにだろう。
あっという間の2時間
本当に今思い返してもあっと言う間の時間で授業は過ぎていった。
今までの経験から、最初は子どももかなりかたくなることが予想されたので、初めはかたいインタビューを省いて歌で登場してもらった。
『オレガヤレバ』という曲で寿君の授業はスタートした。その歌は自分が動かなくては何も始まらない。勇気を持って一歩を踏み出してみようというメッセージの込められた1曲だ。あとから聞いた子どもたちの感想では、結構この曲のメッセージが刺さっていた子がいたようだ。ただ、僕も子どもの様子を眺めていたが、やはり最初の1曲は子どもたちの食い入るような視線が逆に見ていて怖いような表情に感じられた。
そして、場の空気をほぐすためにみんなで体を動かすようなタイミングも入れてみようということでTUBEの大ヒット曲のサンプリングである『あー夏休み』を歌ってもらった。これに関しては大人の方が楽しんでいたようで、たまたま見に来ていた保護者の方や先生たちが盛り上がっていた。この辺りから子どもも一緒に踊ったりと少しずつ会場に笑顔が広がっていった。
そして、ここで一度子どもたちは座って、寿君に様々な質問をする機会を設けてもらった。Reggaeとの出会いや幼少期の話など他では聞くことの出来ないような話をたくさん聞かせてもらった。
その後、まだ当時リリースを控えていた新曲『大どんでん返し』『ONE LIFE』などを曲に込められた思いと共に披露してもらった。
いよいよ最後の曲はもちろん『Special Thanx』である。
僕は未だにあの時の寿君の言葉を覚えている。
「今日はみんなありがとう。ホンマに感謝の気持ちを込めて歌います。明日も明後日もみんなが笑顔で頑張れますように。Special Thanx」
「ありがとう、ごめんなさいはその時思った時には言える人になってくださいね。寿君からみんなにプレゼントです。」
まさに、この気持ちを伝えたかった。そのことを全て伝え、最後を締めくくってくれた寿君には本当に感謝している。
そして、この日から40日間の学校生活を経て、子どもたちはこの小学校を巣立っていったのであった。
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