Reggae×教育【Thunder編】vol.2

Reggae×教育

『未来』に繋がる協力者

 『未来』に繋がる、繋がりそうなメッセージをくれそうな人。

 これから、どんな世の中になっていくかなんて誰にもわからない。

 正直、いつか絶対に役に立つからと小学生や中学生に押し付けるように『我慢』を教え込んだってこれからその力が役に立つかもわからない。

 そもそもその『我慢』に耐えきれなくなった子の『未来』に僕ら教師っていう職業は1ミリも責任を取ることができない。それにも関わらず、その責任を『家庭』や『本人』の見えない『弱さ』に押し付ける教師が大勢いるのが現実だ。

 だからこそ、4年生である子どもたちに伝えるテーマを1つの『価値観』に絞るわけにはいかない。

 たくさんの人の『熱さ』『本気になっている姿』に出会わせて、それぞれの考えるきっかけにすることがベターだと考えながら人探しをしていた僕は、いつものように『音楽』を聞いていた。

 ただ、こんな無茶苦茶なお願いはなかなか他人には出来ない。

 学年の先生がそれぞれ自分にゆかりのあるゲストティーチャーを探してきた。
 ある先生は、プロボクサーの元世界チャンピオンに。現役プロレスラーに。オーケストラの指揮者に声を掛け、どんどん協力者が集まってきた。

 僕自身は、悩んだ結果、2人の友だちに声を掛けた。

 1人は自分の実家の家業を継ぎ、お祭りでベビーカステラの屋台を出している中学の時の同級生だ。子どもたちの住む地域には、伝統的な地車を引く秋祭りがある。毎年秋になると子どもたちははしゃぎながら祭りに行く話が聞こえてくる。そんな祭りに欠かせないのは『屋台』である。子どもたちが興味をそそりそうな『屋台』や『祭り』の裏側に迫ることなんてなかなか経験出来ないだろうと考えた。

 この辺りの話も面白い思い出ではあるのだが、今回のテーマとは外れるのでまたの機会に書くことにしよう。

 そして、もう1人のゲストは、保険会社に勤め、その後ネイリストとして働き、子育て中の小学校の同級生だ。何だかゲストが男性ばっかりになって来ているなぁ。子どもが興味ありそうで、尚且つ『子育て』と『仕事』のバランスを保つ経験をしている声を聞くこともきっと『何か』を考えるきっかけになるはずだという考えから依頼をした。

 結果、みんな快く今回の依頼を受けてくれた。持つべきものは無茶苦茶な頼みでもついついOKを出してしまうような『仲間』だな。と僕は大人になってから『友だち』に強く感謝した。

ゲストは出揃った!?

 次々と今回の授業作りの協力者が決まっていった。

元プロボクサー世界チャンピオン

現役プロレスラー

祭り屋台

産婦人科の院長と助産師

オーケストラの指揮者

起業アドバイザー

ネイリスト

 かなり色々な人の話が聞けそうだ。子どもたちには『協力者』が決まる度に知らせていった。

 ただ、まだ、僕には足りないメッセージがあるような気がしていた。

 僕はこうしたゲストに声を掛けている最中、あるアーティストにもまた今回の授業の趣旨を伝え、是非協力して欲しい気持ちを伝えていた。

 それが兵庫県の尼崎から日本全国で活躍するReggaeのアーティストである『THUNDER』であった。

尼の唄 – THUNDER【MV】

 彼の歌は、ある意味小学校の現場には向いていないような曲も実はたくさんある。だが、そういった一面的な部分を切り取って人を探すのではなく、歌のメッセージや考え方全体から溢れる部分に魅せられて僕は声を掛けたのである。

 具体的に言うと、彼の歌は、所謂『REBEL』なテーマにふれる歌が多い。もちろん、子どもが「気に入らないことには反抗していいんだ!」と言う薄っぺらい取り方をする可能性は無い訳ではない。だが、自分たちの身の回りの『当たり前』に流されて、怒られないためのルートを探しながら、思考することなく『大人』になっていくことは絶対に危険だと僕は感じている。

 さらに、彼の歌には『仲間の大切さ』がメッセージに込められていることがよくある。これから『大人』に成り行く子どもたちに欠かせないものの1つがおそらく『仲間』だと感じていた。目の前にいる子どもたちがなかなか『仲間』を信用出来ない現実を毎日眺めていた。

 でも、この先の人生で僕ら『大人』の指図や誘導だけでは決して上手くいかないことは目に見えている。自分の感性とその周りに集まる仲間といかにしてこの先の見えない世の中を乗り越えて欲しい。

 こんなメッセージを伝える手助けをしてくれるアーティストは、僕の頭の中では『THUNDER』が適任だったのだ。

 もちろんダメもとだ。だが、何となくいける気がしていた。何の根拠も無い自信だが、絶対に協力してくれると信じていた。

 そして、数日後。また、夜な夜な僕は、阪神『尼崎』駅近くに呼び出されるのであった。

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