Reggae×教育【Singer RAY編】vol.6

Reggae×教育

授業が始まった

 いつもとは少し違う体育館の様子にザワザワしながら子どもたちは授業の開始を待っていた。打ち合わせ何てたったの1回、質問の内容もザッとしか伝えていない。それでも僕はきっと伝わると信じていた。

 そして、授業が始まり、ついにSinger RAYが子どもたちの前に登場した。それこそ何百人の前でも歌を歌うようなアーティストだが、とても緊張していた。前の晩に僕と電話で話していた時からとにかく緊張していると話していた。

 授業の前半は、今回来てくれるにあたっての経緯や歌に対する想いなどを聞きながら、彼の仕事に迫っていくようなつくりで進んでいった。ただ、雰囲気は固かった。本人の緊張もそうだが、子どもたちも真剣に聞こうとすればするほど顔が怖い。

 そこで、もっとどうでもいい質問をせっかくだから聞いてみよう!というコーナーを設けたところ空気が少し好転した。

 トップに出している写真はその時の写真である。

 「くまもんとふなっしーはどっちが好きですか?

 会場は、一瞬で笑いに包まれた。何人の記憶に残っているかはわからないが空気が変わった。

心に残る三曲

 45分の授業の半分以上がトークで進んでいく。アーティストには、すごくレアな状況ではあったが、少しずつ会場にSinger RAYという『アーティスト』が、一人の熱い『人間』として浮かび上がって来た空気を僕は感じた。

 そして、いよいよ歌の時間がやってきた。聞き手は、10~11歳。子どもによってはプロの歌を生で聴くことすら初めての子さえいる。

『やってもないのに』

やってもないのにできやしないとか  いいたくなからやるしかないよ
心に音楽の力を  いつも感じてまいろう
やってもないのにできやしないとか  いいたくなからやるしかないよ
後悔しないよう  自問自答して作るMY ROAD

 1曲目から、僕の心は躍っていた。そもそもこの日の為に何度も何度も話す内容を考えたり、何が伝われば大人になれば役に立つかを考えたりしていた。実際、『Reggae』を教えるだけの授業には何の価値も無い。「ただの趣味の押しつけだ!」と言われてもしょうがない。ある意味この授業が正解かどうかを問われれば、僕だって『正解』だとは言い切れない。

 でも、僕たちはあの授業を『やった』その価値は、きっとこれからあの授業を受けた誰かが教えてくれるとその時にふと思えた。

人と心

いつからだろう笑うことより 悩むことが多くなってきた
いつからだろう楽しいより 悔しい気持ちが溢れてきた

RAY / 人と心 (Full Length Music Video)

 「人間は一人で生きていかれへん」「辛い時もあるけど、しんどい時もあるけど頑張っていこう」というMCのあとに続けて歌った2曲目だ。授業後に子どもたちのアンケートで一番反響があった曲がこの曲だ。僕はSinger RAYの決して常に前向きでない『人間らしさ』が大好きだ。その嘘くさくない人間らしさが子どもたちにも伝わったのではないかと思う。

言葉の力

弱い人間を殺す事だって出来る 弱い人間を救う事だって出来る
あなた次第で
この歌をちゃんと聴いてくれてるなら 無駄に人を傷付けるような事
言わないでくれ これが俺からの

言葉の力 あなたに届くから
思いを伝える為の 一番の表現法さ
だからこの歌 あなたに届くかな?
仲間と分かり合える 最高の手段さ Yu understand?

 この曲のメッセージはやはり深い。

 ハッキリ言ってこんなこと言われなくても分かっている。ただ、何度も何度も『失敗』をくり返して「あの時、こう言えればな…」をくり返してきた僕には本気で刺さる1曲だった。

 大切なことはわかっている。でも、言えないのが人間だ。ここにも僕は彼の人間らしさを感じる。

 僕は、今メジャーデビューを果たし、かなりBigになったSinger RAYを今でも心の底から応援している。
 趣味の受け売りだと言われてもしょうが無い。でも、違う。未来に羽ばたく子どもたちに伝えたかったこと。それはきっと彼の『人間らしさから生まれるメッセージ』なのかも知れない。

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