もうひとつのストーリー
運動会の組立体操を華やかに飾るストーリーが出来上がり、練習計画を練り上げている最中にふとTwitterを僕は開いた。
僕のTwitterはレゲエやお笑い、教育など様々なジャンルの人たちの『つぶやき』で埋め尽くされていて、どちらかと言えば発信用では無く、自分のアンテナの感度を強めるために利用している。面白そうなイベントの情報や教育や経済の面白いニュースを拾い上げるためには便利な道具である。
何気なく開いたTwitterであったが、『出会い』は必ずあるものだ。
寿君のTwitterに『もっと近い距離での交流をしていきたい』といった内容が書かれていたのだ。
僕はこれを見た瞬間『もうひとつのストーリー(授業)』が描かれたのである。
それは、自分たちの創りあげた組立体操のフィナーレをさらに華やかにすることを支えてくれた寿君のメッセージを生で聞きながら、これからの人生の役に立つような『人それぞれのちがい』に出会えるような人権学習の単元を作りあげたいというものだった。
思い立ったら即行動
こんな大それたことを考えついたとしても何もしなくては始まらない。
僕に出来ることは、子どもたちに『価値ある教材』を見つけてきて、一緒に話をしながら授業や生活を過ごすことで、『よりよく生きる材料』に繋げる手伝いをすることぐらいである。
即行動が僕のポリシーではあるのだが、そもそも寿君とは繋がりは全く無い。しかも、寿君はその年の4月にメジャーデビューを果たしており、ファンキー加藤やBack numberが所属するid ENTERTAINMENTに所属するアーティストになっている。全国を回り活動する彼に特に有名なワケでもない一公立小学校に来るメリットはほとんど無いわけである。
だからといって動かなければ可能性は0である。動くだけで可能性が少しでも生まれるならとSNSを使って僕らの学校の想いを伝えた。
もし、少しでも可能性を感じてくれれば僕には『想い』がある。人に『想い』は必ず伝わると信じている。そういう性格にしてくれたのは、きっと今まで僕を支えてくれた仲間やSinger RAYにThunderのくれたメッセージなのかもしれない。
可能性が生まれる
僕は運動会の組立体操がまだ出来上がる前からこのプロジェクトに動いていた。ただ、僕にとってもこの学校で過ごす最後の1年でありながら、子どもたちにとっても6年間というとても長い小学校生活の最後の1年であった。やれることは全てやりたいと思っていた。
そして、程なくして僕らに寿君と出会うことの出来る『可能性』が生まれたのであった。僕からのメッセージを見てid ENTERTAINMENTの寿君のマネージメントを務める方から返信があったのである。
その後、何度も何度も打ち合わせや相談を繰り返した。音響のことなど気になることをとても詳細にお話させてもらいながら進めていった。ただ、やはり今までのようにはすんなら行かなかった。大きな会社の人たちに納得させるだけの価値が僕らには十分持ち合わせていなかったのである。
ここからは僕の力は全く及ばない部分ではあったのだが、寿君のマネージャーの方が何度も会社の方と交渉を繰り返してくれたことで僕たちの授業へと繋がっていった。
このやり取りをしている間に、子どもたちの組立体操は実際に本番を迎えていた。ただ、本来子どもたちは例年でいくと運動会の最後の演技としてフィナーレを飾る予定ではあったが、天候不順などを理由に全ての演技のトップバッターで組立体操が行われたのであった。
それでも寿君の歌は確実に子どもたちや保護者の間で話題になり、子どもたちのなかでSpecial Thanxが大切な歌になっていったように感じられた。
だからこそ、僕は今回の授業を本気で成功させたかったのである。
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